1.はじめに

産業構造の変化、成果主義の浸透、情報化社会の急激な進展による業務内容の複雑化・高度化、経営不安に伴う雇用への不安感など、急激な労働環境の変化によって労働者の抱えるストレスは増大しています。ビデオ学習の時にもうつ病の話がありましたがメンタルヘルス不全に関してもこのような症状が見られ問題になっています。一昔前は、働く人にとって「心の管理は自分自身ですべきもの」という考え方が支配的でしたが、過労自殺が社会問題化し、心の健康についても企業に安全配慮の義務が問われるようになり、企業にとって、メンタルヘルス対策は無視できない問題になっています。そこでこれからはどのような段階を経てメンタルヘルス不全になっていき、そしてどのような処置を患者本人、家族、友人、企業がとればよいのか話していこうかと思います。

 

 

2.キーワード

    メンタルヘルス 過労

 

3.選んだ本の概略

メンタルヘルス不全としての病気はいきなり発症するわけではない。メンタルヘルス不全に伴う不調が徐々に大きくなり、結果としてそのような病気が発症する。よってこの病気のプロセスを理解して、病気の発症に至る前に何らかの対応を行うことで病気の発症を予防することも重要である。ここではその病気のプロセスとその対応を紹介する。(1‐A)働いている状況で不調和感を感じる段階。  「この職場でやっていけるかなあ」と思いつつ、いろいろな不調和感で悩んでいる段階である。ここでは、不適応は表面化していないので本人は悩みを自覚していても周囲は本人の本音を聞く機会がないと捉えられない。このときはもっぱら上司と自分の本音を話しやすいか、はなしづらいか、が問題となるが、上司としては傾聴つまり相手の話に耳を傾けてその内容を批判せずに受け止めることが必要である。また本人の方も、不調和感に気づいた場合は、上司や同僚に最近感じていることを話してみることも重要である。 (1‐B)働いている状況で不調和感を感じていない段階。 「仕事に夢中で張りきっている」ために、本人の負担がさらに増えた段階で、過剰適応により様々な心身の不調が現れる。この段階では、むしろ周囲が「最近、働き過ぎではないか」と気づくことが多い。上司は本人から最近の状況を聞いて仕事の量的な負担を減らすようにする。また本人も少しだけ普段と違うということを捉えて上司に相談することが必要である。 (2)不適応準備状態の段階。 この段階では、心労の疲労が増加しているために様々な不調感を感じ、自分自身でもいつもの自分とは異なる感じに気づいている。上司は多少異なる感じがあることを捉えて、話を聞く機会をつくり、必要ならば休暇をとらせる対処を行う。この時に対処で解決できない場合では医療機関への受診を勧めることが必要になる。本人は周囲から普段よりもイライラしているように見えたりなど違和感を感じるが仕事のペースで遂行しているので、心身の不調は本人に聞いてみないとわからない。 (3)不適応状態の段階。 この段階では、本人の不調は職場でも捉えられており、仕事の休みやミスが多くなるなど職場場不適応の段階にきている。上司は本人からいマの状態をきくことが必要であり、本人も仕事の質や量などについて一緒に見直していくようにする。また産業医などに相談した上で医療機関への受診を勧めるが必要になる。(4)メンタルヘルス不全としての病気の段階 この段階では、本人、上司は速やかに医療機関へかかれるようにする。ここでは多くの場合、まとまった休務が必要となる。しかし本人の会社に迷惑をかけたくないなどの意向を汲んで、比較的短期間の自宅療養の診断書を発行することである。職場のほうでは、3ヶ月間程度の休務を想定した職場の体制作りを考える必要がある。そして本人自身は職場復帰を焦らずに十分な休養を心がけるようにする。

 

 

メンタルヘルス対策

これは厚生労働省から出された対策である。基本的な考えとしては事業者の積極的な意思表明、衛生委員会などにおける審議、基本的な計画の策定の必要性を強調するものである。(1)衛生委員会における調査審議。 メンタルヘルスケアの推進にあたっては労働者の事業の実態に即した取り組みが必要である。この実施体制の整備等の具体的な実施方策や情報の保護に関する規定等の策定にあたっては衛生委員会等において十分調査審議を行うことが必要である。

(2)心の健康作り計画。 メンタルヘルスケアを効果的に推進するためには、心の健康作り計画の中で、事業者自らが事業所におけるメンタルヘルスケアを推進することを表明すると共に、その実施体制を確立する必要がある。この心の健康作り計画で定めるべき事項はつぎに掲げるとおりである。@事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること A事業所における心の健康作りの体制の整備に関する事 B事業所における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関する事 Cメンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業所外資源の活用に関する事 D労働者の健康情報の保護に関する事 E心の健康作り計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関する事 Fその労働者の心の健康作りに必要な措置に関する事 (3)セルフケア。 管理監督者にとってもセルフケアは重要であり、事業者は、セルフケアの対象者として管理監督者も含めるものとする。 (4)ラインによるケア 通常のラインによるケアが困難な業務形態にある場合には、実務において指揮命令系統の上位にいるもの等によりケアが行われる体制を整えるなど、ラインによるケアと同等のケアが確実に実施されるようにするものとする。(5)事業場内産業保健スタッフなどによるケア 事業場内メンタルヘルス推進担当者についても産業医等の助言、指導等を得ながら事業場のメンタルヘルスケアの推進の実務を担当する事業所内メンタルヘルス推進担当者を、事業場内産業保健スタッフの中から選任するように努めること、また一定規模以上の事業所にあたっては事業所内、企業内に、心の健康作りスタッフや保健師等を確保し、活用することが望ましい。(6)メンタルヘルスケアの具体的な進め方 ここのケアの具体的な進め方では一次予防としては@教育研修 A職場環境の把握と改善 二次予防としては、Bメンタルヘルスケア不調への気づきと対応、三次予防としては、C職場復帰における支援、の順に順立てしてある。(7)労働者の家族による気づきや支援の促進 事業者は労働者の家族に対して、ストレスやメンタルヘルスケアの関する基礎知識、事業場のメンタルヘルス相談窓口などの情報を社内報や健康保険組合の広報誌等を通じて提供することが望ましい。また、事業者は、事業場に対して家族から労働者に関する相談があった際には、事業場内産業保健スタッフ等が窓口になって対応する体制を整備するとともに、これを労働者やその家族に周知することが望ましい。 (8)職場復帰における支援を新たな項立て 事業者に対して@衛生委員会等において調査審議し、産業医などの助言を受けながら職場復帰支援プログラムを策定すること A職場復帰支援プログラムの実施に関する体制や規程の整備を行い、労働者に周知を図ること Bこのプログラムの実施には組織的かつ計画的に取り組むこと C労働者の個人情報の保護に十分注意しながら事業場内産業保健スタッフ等を中心に労働者、管理監督者がお互いに十分な理解と協力を行うとともに、労働者の主治医との連携をとりつつ取り組むこと (9)メンタルヘルスに関する個人情報の保護への配慮 メンタルヘルスケアを進めるにあたって健康情報を含む労働者の個人情報は、その取得、保管、利用等において特に適切に保護しなければならないが、その一方でメンタルヘルス不全の労働者の対応にあたっては、労働者の上司や同僚の理解と協力のため当該情報を適切に活用することが必要となる場合がある。健康情報を含む労働者の個人情報の保護に関しては、個人情報の保護に関する法律及び関連する指針等が定められており、個人情報を事業の用に供する個人情報取扱事業者に対して、個人情報の利用目的の公表や通知、目的外の取扱いの制限、安全管理措置、第三者提供の制限などを義務づけている。また、個人情報取扱事業者以外の事業者であって健康情報を取り扱うものは、健康情報が特に適正な取扱いの厳正な実施を確保すべきものであることに十分留意し、その適正な取扱いの確保に努めることとされている。事業者は、これらの法令等を遵守し、労働者の健康情報の適正な取扱いを図るものとする。 (10)小規模事業場におけるメンタルヘルスケアの取組の留意事項 常時使用する労働者が50人未満の小規模事業場ではメンタルヘルスケアを推進するにあたって、必要な事業内産業保健スタッフが確保できない場合が多い。このような事業場では、事業者は衛生推進者又は安全保健推進者を事業内メンタルヘルスケア推進者として選任するとともに、地域産業保健センター等の事業場外資源の提供する支援等を積極的に活用し取り組むことが望ましい。

 

4.まとめ

今までの話ではメンタルヘルス不全になるプロセスとそれに対する処置、また事業場でのメンタルヘルスケアへの取り組み方を説明しました。この病気は発生するまでに段階があり、それぞれに対処法があります。そしてどの段階にも本人の気持ち、事業場、上司の対応がとても重要というのが分かりました。本人は自分の不調を隠して自分だけで対処しようとせず上司に話すべき、上司も部下の話を傾聴し、対処法を学ぶことが必要だと思います。事業場全体でも、労働環境の整備により労働力の低下を防ぐ為に、先ほど述べたようなメンタルヘルス対策を実施すべきです。本人が自分の症状を正直に話し、上司がその意見を聞き適切に対処、事業場は会社としてその本人と上司の意見等から労働環境を整備に活用する。3者が各々行動するのではなく、連動して初めてメンタルヘルスケアとは成り立つものではないのかと私は思いました。実際にはなかなか3者がきれいに連動しないこともあります。しかしこのような病気があるんだよというのを、今後、社会に関心を持ってもらうことでさらにメンタルヘルスケアは発展すると考えたいです。